第21回「SF合宿で『待宵』」
2006.08.04
私は、日本SF作家クラブなる団体に入っております。SF作家の仲良しクラブみたいな性格の会で、親睦が主たる目的。カルテルみたいな機能はありません。
年二回程度、東京で総会があるのですが、私は熊本在住。熊本で仕事をしている関係上、日本SF作家クラブの会には、ほとんど出たことがありませんでした。
ところが、今回、長野県の小諸市というところで、日本SF作家クラブの温泉合宿という企画があり、案内が届いたのです。ふだん失礼していることもあり「温泉か‥‥いいなぁ」と発作的に参加を表明してしまいました。でも、ちょっと怖い。ふだん参加していないので、どんなキャラクターの作家さんが来るのかわからないんでねぇ。小心者としては、おっかなびっくりでありますよ。おまけに、「合宿」とあるからには‥‥。
何やら、予期せぬサプライズが仕掛けられているのではないかという不安もありました。
夜中に叩き起こされて、マラソンさせられながらSFのアイデアを考えさせられたり、グループ毎に、それぞれ自著の自己批判をさせられたりするのではないかなぁと。
しかし、熊本から小諸は遠かった。羽田を経由して小諸へ。朝立ったのに、着いたのが夕方五時でしたから。
会場は「川棚荘」という島崎藤村ゆかりの鄙びた宿。到着しただけで疲れがどっと出てしまいました。
宴会が始まり、そのそうそうたる顔ぶれに仰天しました。小松左京、筒井康隆両御大が出席しておられる。
いや、熊本にいると、ほとんどナマ作家さんと縁がないので、私も単なるミーハーSFファンに戻ってしまい、嬉しくて浮かれてしまうのでありました。
谷甲州SF作家クラブ会長の挨拶も、両御大を前にして緊張気味です。小松御大は七月公開の「日本沈没」の大宣伝。続いて、筒井御大は自著「日本以外全部沈没」(秋公開だそうです。なんと一週間で撮り終えたらしい)の映画化エピソードで全員爆笑。
いやぁ、なごやかな笑いの絶えない宴会です。筒井御大は、持ち込んだ長さ50センチはあろうかという巨大葉巻に火を着け、喫煙者であろうがなかろうが回し吸い。まるで、ネィティブアメリカンが兄弟の契りを交わす儀式の体でありました。
そこで、皆、ビールからセカンドドリンクへ。注文は圧倒的に芋焼酎が多い。東京の人たちには、芋焼酎が浸透しているんですね。
私、持ち込んでいたものを取り出し、芋焼酎を注文した方々にお注ぎしました。
熊本空港で準備した「待宵」です。
ま、ほとんど無理強いしたわけです。銘柄言わずに「黙って飲んでみて下さい」って感じで。
SF作家クラブの男性、ほぼ全員が試飲。筒井御大が「うまいよ、これ!何というの?」「熊本の米焼酎です。まだ、熊本県外では、販売されていないんですよ」
そう説明すると、ホォーッとボトルをしげしげと眺めておられました。
これで、私、ポイント稼げたね!
その後、ほぼ全員が小松御大の部屋に潜り込んで馬鹿話。SF作家の話って、高尚かと思われるかもしれませんが、決してそんなことはないんです。
SFファンの中学生がやってるホラ話とほとんど差はなく、くだらない駄洒落から、文明論、マンガの話、映画の話と、午前二時まで盛り上がったのでした。
持ち込んだ「待宵」、全部空になっちゃった。