第33回「あなどれんぞ、カラス」
2007.08.01
人間以外で、知能が高いのはサルやイルカというのが定説だが、いつも私が驚かされるのは、カラスの頭の良さである。
コマーシャルで、カラスが殻を割るためにクルミを道路に置く、という描写がある。
まさか、そんなこと、と思っていたら、どうも本当らしい。
自分の目で、いくつかのケースを確認するに至って、カラスって頭がいいんだと、感嘆すること、しきりである。
くじゅうの山の中を歩いていたときのこと。中岳の最後の登りの手前の岩場。リュックが三個置かれていた。
山頂までガレた登山道を数十メートル登るだけだから、リュックの持主たちは、身軽にして山頂を極めようとしたのだろうな、と思った。
そこに、飛んできたのが、一羽のカラス。リュックに近付く。
どうするつもりなのか、と私は立ち止まって様子を見ていた。
ところが‥‥。
カラスは近付くや、二つ付いているバックルを嘴で開け始めた。
無駄な努力をして‥‥。と思って、せせら笑いながら私は見ていたのだが、なんと、二つとも、あっという間にはずしてしまった。
ええっ?
カラスは、おもむろにリュックを開き、中に嘴を突っ込んでビニール袋を引っ張り出す。
あ・わ・わ・わ。
リュックの持主が、今、山頂から下ってきて、カラスが飛び立ってしまえば、リュックを荒らしたのは私だと思われてしまうではないか!
「これは、カラスの仕業ですよ」と主張しても、バックルを二つともカラスがはずしたなんて信用してもらえる筈がない。
それからカラスがどのような行動をとったのか確認しないまま‥‥。
私は脱兎の如くその場を遁走したのです。
あれ以来、朝ゴミを散らかすカラスを防御する方法は存在しないのではないかと考えるようになりました。どんな方法を使っても、それを無効化する方法を編み出すにちがいないと思える。
最近遭遇した、もう一つの例。
熊本市のはずれの田園地帯を走っていたときのこと。
前方に信号があり、黄色に変わったので、運転していた自動車を停止させた。
歩道の手前に人の姿は、まったくない。
代わりに‥‥。
目を疑った。
カラスが、一匹立っているのだ。
信号待ちをしていたのである。
で、歩行者信号が青になると、そのカラス、すたすたと私の車の前の横断歩道を歩きはじめた。
それから、渡り終えたカラスは、どうもそれで気が済んだようで、ばたばたと、いずこへか飛んでいったのだった。
飛べるのに、なんで信号待ちなんだよ!
理由は一つしか考えられません。カラスは馬鹿な人間の真似をして“遊んでいた”のではないだろうか?
やはりカラスは途方もない知恵を持っているとしか考えられない。
自分たちを攻撃する特定の人間を、カラスは見かけて仕返しをするという話も、最近聞いたばかり。
その特定の人だけを狙って、糞をかけたり、嘴で襲ったりするらしい。
ということは、カラスは人を一人づつ識別できるんですね!
カラスの知能の限界は、どこにあるんだろう。
ひょっとして、今の人間たちが滅んだら、次の地球の征服者は、カラスなのではなかろうかと、考えてしまう。