カジシンエッセイ

第50回「2012年の恐怖」

2009.01.01

あけましておめでとうございます。
一年が経過するのって、速いですね。年齢を重ねる度に実感します。お花見をしたのが、つい先日のような気がするのに、もうお正月ですからね。子どもの頃は、なかなかお正月が来てくれない気がしたのに、今は、もう光陰矢の如しって、このことだなって思えるほどです。時の流れる速度って年齢に比例して速くなるのかなぁ。あるいは身長に比例したりして。低い場所で時がゆっくり。背が伸びると、高い場所では時は坂を転ぶ石のように、とか。
あるいは、年齢を重ねて、思考速度がゆっくりになって、時の速度に追いついていないのかもしれない。
でも、この年齢になると、あまりめでたいとも感じなくなります。テレビの正月番組で着物姿の出演者の空騒ぎを見ていると虚しさしかありません。
一休和尚が、乞食坊主の姿で手に髑髏を持ち、正月を祝っている家をまわって「正月は冥土の旅の一里塚。めでたくもあり、めでたくもなし」と唱える意地悪じーさんぶりも、理解できるようになってきたような気がします。
さて、そんな時期に思い出すのが、2012年の何ちゃらであります。

よほど、人は終末論が好きと見えます。世紀末には1999年7の月にノストラダムスの大予言で人類は滅びる予定だったのを潜り抜け、ファティマの予言も何ごともなく、そして今、クローズアップされているのが、2012年の12月終末論であります。
“宇宙人を見た!”の回で紹介したおじさんですが、その後も、私にユダヤ陰謀論を熱く語ったりして、株が暴落すると大損しては「ユダヤのプログラム通りだ」とか、「新型インフルエンザは、某組織による人口調節です。地球人口は、彼らにとって十億人くらいが、ちょうどいいらしいんです」と酔眼で警告を流し続けておられます。
そのおじさんが、最近言いだしているのがこの2012年クライシスなのであります。「カジオさん、知ってますか?2012年の12月に人類はとんでもないことになっちゃうそうなんですよ」
彼は、最近、そのような話を聞き及んだらしいのです。私は、職業上、そんな情報は、よく入ってくるから驚かない。とんでも超大作を撮るローランド・エメリッヒも、そんな、まんま「2012」というタイトルの映画を作っているという話もあるし。
「知ってますよ。ユカタン半島にある古代マヤ文明の万年時計が、2012年の12月23日で切れているってのが、スタートになっているんですよね」
「そうそう。よく知ってますね」
「だって私の誕生日は、12月24日だから、誕生日の前日に世界が滅ぶってことでしょう。
そのカレンダーには、マヤ文明が滅亡する日は書いてないんですよね。そっちの方が、彼らには重要じゃなかったのかなぁ。予言するなら、そっちでしょ。それと、ホピ族の予言をからませて流布してる」
「あと、フォトン・ベルトがちょうどそのとき地球を包んでしまうという、何の根拠もない疑似科学の説がありますよね。それで、人間の遺伝子構造が変化して、進化する奴と淘汰される奴が出るというけど、フォトンを浴びてどんなことが起こるか、誰にもわからない」
そのくらいが、私が理解していることだが、フォトン・ベルトなるものが実在しているかどうかも証明されているわけじゃないし。
「その通りですよ。皆、勉強してないんですよ」
「勉強したって仕方ないでしょう。嘘か真かもわからないし。それで大衆が攪乱されてパニックになる方が余程怖い。そうなったら、それは予言の罪ですよね」
「でも」、大変なことですよ。これは……。あと四年経ったら」
「だったら、あと四年経ったらお金なんて紙屑になってしまうんだから、今のうちに全部使ってしまいましょうって広報した方がいいんじゃなかなぁ。預金されているだけで流通していないお金が、すべての市場で動き始めたら、不況はあっという間に解決して、経済が活性化する気がしますねぇ。人類が四年後に滅びなかったら、その後は知らないけれど」
まだまだ、このおじさんは面白いネタを持ってきてくれそうであります。
では、今年もよろしくお願いします。

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