カジシンエッセイ

第55回「夢のはなし」

2009.06.01

不思議な夢を見たりすると、どうしてこんな夢を見るのだろうと、その理由を考えたりしませんか?
その脈絡のなさ具合が、目を醒ましたときに、ああ、やはり「夢」だったのだと納得できてしまう由縁ではあるのですが。
突然に歯がすべて抜けてしまう夢やら。糞尿まみれになっている夢やら。見知らぬ場所をさまよっている夢やら。
それが何を意味するのか?知りたくてフロイトやらを学生時代に読んだりもしましたが、どうも違う気がしてならない。性的願望がいつも深層心理に抑圧されているようで、「人間、みなスケベかよ。それだけかよ」と思ってしまいます。
他の夢分析やらでは、歯が抜けると体力の低下を表す、と書いてあったり、必要なものが手に入ると書いてあったりで、正反対です。だから、最終的に夢を見た人の解釈に委ねられるようだなあ。あまり、あてにならないかな。それから、必ずプラスのイメージ解釈とマイナスのイメージ解釈が書いてある。そりゃあ、どちらかは当たるでしょ。だから、夢判断は信用できない気がするのです。

なんだか、夢というのは、巷でいう夢分析やら夢診断とは異なる"凄い情報"をひょっとしたら伴っているのではないかな、とも思うのですが。でも、残念ながら……真実は、"そこ"にあるのでしょうが。
けっこう有名なショートストーリーで、こんな話があります。
ある老女が、毎夜、同じ夢を見るのです。それは、どこか知らない見覚えのない丘の上に建っている屋敷にいる夢です。その屋敷の中を見てまわっても、誰も住んでいる気配がないのです。
なぜ、毎夜、同じ屋敷の夢を見るのかを考えてもわかりません。その夢のことがずっと、頭に引っかかっていました。
その老女が旅に出たときのことです。ある田舎道を通りかかったとき、馬車の窓から衝撃的な光景を見てしまいました。
丘の上に建っている屋敷です。いつも夢の中に出てきた……。間違いありません。
老女は、御者に命じて馬車をその屋敷に寄らせました。近づくにつれてその屋敷が夢の中に出てくるそれと同じであるという確信はつのります。屋敷の前で馬車を降りた老女は、近くにいた農夫に声をかけました。
「この屋敷には、どなたが住んでいるのですか?」
「誰も住んでいませんよ。おまけに、夜には幽霊が出ますから」
「えっ?幽霊が?」
すると農夫は、老女をじっと見てい言いました。
「あなたですよ」
こんな話に登場する夢の方が、私にとっては、真実味があるような気がするのです。
で、私が一番好きな夢は、空を飛ぶ夢。現実には高所恐怖症で飛行機は大の苦手なのですが、「これは夢だ」と認識できているので大丈夫なのです。寝入りばなに、空を飛ぶ夢を見ようとコントロールできるほどです。滑走路を走って飛び立ち、徐々に高度を上げていくほどにリアルです。
嫌な夢で、心臓に悪いな、と思う夢。
なぜか、私が大学生で、試験に遅れる夢を見るのです。朝、目を醒ますと目覚ましが鳴っていない。完全に遅刻ということに気がつきます。その日は、卒業試験か何か、大事な日なのです。あわてて飛び起き、服を着て走ります。ところが、なぜか、身体が上手く動かない。着いても、試験場の教室へ入れてくれるかどうかわかりません。しかし、何とか大学にたどり着く。腕時計を見ると、何とか試験場に入れてくれそうだ。
やれ嬉しやと、試験場の教室へひた走り。
すると、ゼミの友人がなぜかキャンパスの向こうからやってきて、私に言うのです。
「あれっ。カジオくんは昨日の試験、休んでいたよね」
どうも、一日まるまる眠っていたらしい。
そこで、目が覚めるのです。
なぜか、繰り返し、この夢を見るなあ。
夢の話を書いてみようかと思った理由ですが……。
最近、三人の方に言われました。
「夢の中にカジオさんが、出てきたんですよ」って。
私には、まったく心当たりがないのですが、そう言われると私としてもけっこう不安になってしまうのですよ。

カテゴリー:食に夢中

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