第58回「なくて、七癖」
2009.09.01
私は、毎日、自宅から花岡山山頂まで散歩するのですが、そのコースは何の変哲もない平凡なコースだと思っていました。
そしたら、テレビで「秘密のケンミンSHOW」を見ていたら、日頃歩き回っている花岡山公園は、熊本県民のデートスポットということで紹介されていました。
いやぁ、驚いた。そんなに全国に紹介されるような場所を私はいつもうろついていたということなんですねぇ。知りませんでした。
ケンミンSHOWでの意外性は、他県人が見たら奇異な光景も、当の県民たちには至極当然だととらえられていて、それが面白さにつながっているようです。
なるほど、本人は当然だと思っていたり、無意識にやっていたことも、周囲から見ると「変なの!」と思われることは、個人レベルや、グループレベル、性差レベルと、いろんな集団で発生しているようです。
人の物真似がうまい、という知り合いがいます。それで、あるとき私の物真似をやるという。
私なんか、特徴のない話しかただし、やりづらいだろうなぁ、と思って聞き始めました。
そしたら……。
「はい・はい・はい・じゃ・ま・そーゆーことで。はい。じゃ・ま・よろしく」
電話をかけている真似だったそうですが。
皆が口を揃えました。
「似ている」と。
ひょっとして、電話で無意識のうちに、そのような話しかた、話しの閉じ方をやっていたのでしょうか?
言われたら、そうなのかもしれないと考えてしまいました。
それから、翌日、仕事の電話がかかってきたとき。
「わかりました。じゃあ、今月末までってことで。はいっ。はい。ま、そーゆーことで。おろしくお願いします」
受話器を置こうとして、はっと気がつきました。
-----真似された通りに喋っていた!
それが正直な驚きでした。
どうも私の頭の中に、私自身気づいていない対応回路ができあがっているらしい。そして、思考と関係なくそう答えることで、自分の心のバランスをとっているようなのです。
ははぁ、これが例の……。
「なくて七癖」
で、これはパーソナルな癖でありますが、他にも、教えられなくても、ヒトには無意識のうちにやってしまう行為というものが、いくつもあるということに気がつくようになりました。
ある知り合いに言わせると、他人の癖が気になるのは、その人に対して特別な感情を抱えているとき(たとえば、嫌な奴、とか、苦手、とか、大好き、とか)気がつくのだそうですよ。だからクセを覚えられるというのは特別な感情を抱かれているわけで。それが、いい方向で私に向けられていることを祈るばかりです。
スーパー銭湯やら温泉やらに行くと、風呂上がりに牛乳を飲んでいる人をよく見かけます。
これぞ、男性の……なくて七癖。
みな、左手を腰に当てて、ぐいぐいと飲むんですね。
なんで、左手を腰に当てるんでしょう。訊ねてみると。
「なんでかな。おかしいですか?」
「飲むときに安定するからじゃないですか?」
「左手をダラーンと垂らして飲んだら、間が抜けて見えるって無意識に承知しているからじゃありませんか?」
そんなことをそれぞれ言うけれど、何がほんとうに正解かはわからない。ただ言えるのは、風呂上がりに牛乳瓶を口に当てるとき、左手を腰に当てる事実があるってことだけです。
紙パックのときはストローだけど、それはないなぁ。
それと、もう一つ。
これは男性も女性もないですね。
目薬を差すとき。
ほとんどの人が口を開いてますよね。
あれも、人間の、自分では気がつかない習性ではありますまいか。
目薬を差しているときに、そのことを気にしだして口を閉じたら、なんとなく目薬が目に入らないような、不安定な感じがつきまとうのですよ。
この習性を利用して、目薬の下にジュースを付けて、差せばジュースが口の中に入るという構造にしておけば、目薬を差すのを嫌がるこどもも減るのではないかしら。
いや、他にも、自分では気がつかないけれど存在する習性というのに、こういうのがあるって気がついた方。教えてもらえませんか?