知る 人

焼酎造りで、人ができることは、ほんのひとにぎり。 米の偉大さ。水の尊さ。そして酵母のありがたさ。長く焼酎造りにたずさわるほど、人間ができることは、ほんのひとにぎりしかないのだと感じます。 でも、そのひとにぎりが、仕上がりの味を大きく左右する。だからこそ造り手たちは、米から、麹から、もろみから、蒸留釜から、目がはなせません。 その日の気温や気圧の変化によって、
「生き物」のように状況を変えていく。プツプツというもろみの声に耳をすます。温度計をにらむ。空を仰ぐ。何度も、何度も、釜をのぞきこむ。蒸留したての焼酎から、ふわっと香りが立ち上る、その瞬間まで。 造り手にできるすべてを、積み重ねていく先にしか、おいしい本格米焼酎は生まれません。
高橋酒造株式会社・株式会社白岳酒造研究所 製造部長 藤本俊司

「常に変化を。時代が求める味わいを探求し続けていく」

高橋酒造は日本三大急流で知られる球磨川のそばに本社・蒸留所を構え、米を主原料とする球磨焼酎造りを行っています。当社を代表する銘柄は「白岳」と「しろ」。「白岳」は昭和35年に、「しろ」は昭和60年に誕生しました。
私も入社後、すぐに「しろ」の開発に携わりましたが、苦難の連続の上、やっと理想の酒質にたどりついたことを、昨日のことのように覚えています。
日本酒も同様ですが、焼酎づくりで重要な働きをしてくれるのが微生物の麹と酵母です。特に酵母は自然界に数千種類存在すると言われてますが、「しろ」は蔵付き酵母(自家培養酵母)を大切に使用しています。
私たち蔵人の仕事で重要なことは、酵母や麹など自然界の持つ力を十分に引き出すこと。もろみ造りから蒸留工程、割水やろ過まで気を抜くことはできません。
今では「しろ」は多くの方にご愛顧いただいていますが、酒質は常にマイナーチェンジを繰り返しています。お客様の好みや食文化など、時代が求める味わいは常に変化しており、いつの時代でも「美味しい」と思っていただける酒を造るために、私たち蔵人の探求も続きます。

高橋酒造株式会社 多良木蒸留所 製造一課長 渕田浩二

「焼酎造りは真剣勝負。酵母が働きやすい環境づくりを」

「白岳はいつ飲んでもうまい」。
お客様にそう言ってもらえることは、とてもうれしい反面、多良木蒸留所の杜氏として責任を感じます。
私が受け持つ多良木蒸留所は、高橋酒造の創業の地。明治33年(1900年)創業ですので、約120年の歴史を誇ります。
焼酎造りは経験が重要。最も気を使うのは「もろみ」の品温管理で、温度が上がりすぎても、下がりすぎても美味しい焼酎にはなりません。「もろみ」造りの最中は、自宅にいても品温のことが気になり、心配で夜中や早朝に温度チェックに行くことも。人や設備の力も大切ですが、酵母が働きやすい環境をつくることも大切な仕事です。自然の生き物が相手ですので、天候や気温で刻々と変わる状況にも気を配ります。精魂込めて造った焼酎を利き酒するときは、まさに真剣勝負。酒質の評価が高いとホッとします。
おかげさまでこれまで、熊本国税局管内酒類鑑評会で50回を超える優秀賞を受賞してきました。これからもうまい本格米焼酎づくりに邁進していきます。