Columnカジシンエッセイ

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Column - 2007.12.01

第37回「私は、見た!!」

私は幽霊やらUFOは信じない方だ。ということは、以前にも書いたけれど、それでも私の周りには、そんな不可思議なできごとを体験したという人が集まってくる傾向があるのですよ。
つい先日も、そんな体験をした!私は、見た!という人の話を聞いてしまい、あんまりおかしいので、再録することにしました。
「梶尾さん。僕は宇宙人を見たんです」
「ええっ?どこで見たんですか?」
そんな話を聞いたのは居酒屋のカウンターで、相手は五十代のサラリーマンの方。嘘をつくタイプでは、ありません。
「旅行中です。波照間島に行ったときです」
「波照間島?」
波照間島といえば、日本も南の果てです。
そこに宇宙人(エイリアン)の秘密基地があるというのでしょうか?
「ええ、そこの海岸近くの公衆トイレです。そこで宇宙人と会いました」
「えっ?ホントですか?用を足していて、横を見たら宇宙人も用を足していた‥‥。そんな状況ですか?」
「いえ、そんなんじゃない。トイレから出てきたんです。」
「どんな恰好していたんですか?機密服を着ていたとか‥‥?」
「うーん。作業服を着ていたなあ。カーキ色の」
「普通の人間じゃないですか?」
「いや、あれは宇宙人ですよ」
「どうしてわかるんですか?」
「いや、一目見ただけでわかります。だって鼻から上は、額まで、こーんな(と言って、両手の指で大きな輪を作って額にあててみせる)目玉をしているんですよ。他に何だというんです。宇宙人ですよ」
「ヘェ。で、後をつけたんですか?近くにUFOとか停まってなかったんですか?」
「いや、そのときは尿意が勝っていて、見逃しました」
「ふーーーーーーーーーーーーーーーん?」 それから、「それは、波照間原人かもしれないではありませんか?」とか突っこんだんですが、本人は、宇宙人です、と頑と言い張るのでした。
「あっ、あっ、あー。梶尾さん、信用していませんね。実は法華院温泉でも、でっかいUFOを見たんですよ!」
「ええええええっ」
法華院温泉は、くじゅう連山の中にある。
「昨年の連休ですよ。男三人で平治岳に登って、坊がツルに下ってきて法華院温泉に泊まったんですよ。予約を入れてないから、大広間で他の登山客と雑魚寝の状態なんですよ」
法華院温泉は、山小屋と呼んだ方がぴったりと来る。私も何度か、利用したことがあるから、すぐにイメージが湧きました。
まさか、そこにUFOが‥‥?今度もホントかよ‥。眉にツバをつけながら聞く。
「あまりにまわりが騒がしいんで、飯食ってから、一人で外に出てみました。そしたら、夜空の星がぱあーっと広がっていて、静かだし、とにかくきれいなんですよ。感激して、しばらくボーッと見ていたらUFOが低く降りてきたんです。それで大船山くらいの高さで止まって浮かんでるんですよ」
「驚いたのなんの。最初、なんだろ!って思ったくらいです。で、UFOだ!って。真っ白く輝いてて、でかいんです。窓があって、中で誰かが動いているのがわかるんですよ」
「ふうん。他に目撃者はいるんですか?」
「そう思って友だちを呼びに行ったんです。あわてて‥‥でもダメでした」
「どうして?」
「UFOが飛んでる!って言ったんですが、友だちは、それどころじゃない!って」
「ええつ」
「今、部屋の隅で、お客のお姉さんたちが、ネグリジェに着替えているところだ!って」
「‥‥‥‥‥‥」
「それで、しばらく一緒に眺めていて、その後、友だち連れて皆で外に出てみたのですが、もうUFOはいなくなってました」
皆さん。この人の話を信じますか?
私は、山登りの山小屋にネグリジェを持参する女性がいるというのが、どうしても信じられない。
UFOが存在するか、しないかは別として。

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