Columnカジシンエッセイ

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Column - 2008.01.01

第38回「カジシン寄席」

あけまして、おめでとうございます。
このところ熊本では恒例になりましたが、初笑いということで、第四回カジシン寄席・立川笑志独演会を開かせていただきます。
笑志さんとは、奇妙な縁でつながっています。笑志さんは福岡出身ですが、私の大学の後輩になるんです。大学時代は落研だったそうですが、卒業後サラリーマン生活を経て、立川談志師匠の一門に入り、研鑽を積まれて昨年、めでたく真打ちに。
初めて笑志さんの名前を知ったのは、同窓会でもなく、私の机に届けられた一枚の名刺からでした。
その頃は、私は油屋をやっていて、モノ書きは裏家業といった生活をしていたのですが、
そんな私の店から、この立川笑志さんの名刺が。

「社長の小説をいつも読んでいる、と伝えて欲しいそうです。大学も後輩だって」
そう聞きました。名前も顔も浮かびません。
名刺入れに収めて数年が経ち、ある日のこと、出版社から新聞の切り抜きが送られてきました。「黄泉がえり」の書評でした。誰が書いているんだろう、と名前を見たら、立川笑志さん。
慌てて、笑志さんの名刺を探し出し、お礼のハガキを書いたのです。それに笑志さんが返事をくれて、文通らしきものが始まりました。
いや、文通といっても年賀状やりとりのようなものです。
年賀状に私が「一度、笑志さんの落語を聞いてみたいものです」と出すと、翌年の笑志さんの年賀状に「ぜひ、聞かせたいです」と書いてある。
そんなやりとりが数年続いて、笑志さんがパーソナリティを受け持つラジオ番組に電話出演という話が。それで初めて笑志さんとは、ナマのお声のご対面ということになりました。
それがきっかけになったのか、熊本でも笑志さんの噺を聞く会を開こうということになりました。
それが「カジシン寄席」の第一回。そして初めて笑志さんの講座を聴きました。


うまい!


舌を巻きました。初めて聞いたのは「元犬」です。SFや奇妙な話好きの私に目配せしていただいたのかと嬉しくなりました。それからも「元結文七」や「紺屋高尾」など人情系落語も、脂が乗りきっていて風格が漂っていましたねぇ。いっぺんに笑志さんの話芸のファンになりました。
その時期は、まだ笑志さんは二つ目だったのですが、すでに真打ちの実力だと認識した次第。
三回目カジシン寄席では、私の短編「月下の決闘」を新作落語として語っていただきました。いや、自分が作った話を落語として聞くのは何だか照れくさいものです。
そして今年のお正月十四日の夜に、真打ちになった笑志さんがカジシン寄席に還ってきます。今回は、私が前からリクエストしていた「芝浜」をやっていただく予定です。
それから、それから。
笑志さんから、ご相談の電話がありました。
三題噺をやりましょうか、という話でした。
ああ、私が題を出せばいいのか、と軽く考えていたら、それがちがう。
お客さまからお題を三ついただき、それを私が話にして、笑志さんに演じていただくという恐怖の企画であることが判明。
だから、私としては楽しみと同時に、とっっても心配なのであります。

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