Column - 2014.06.01
第115回 ネット音痴です
最近、"炎上"という表現を目にするようになりました。ネットには疎い私ですが、ネット内でよく使われていることがわかりました。それは、ブログやSNSなどの場で書き込まれた意見に対して、非難や抗議の書き込みが集中する現象のようです。あまりに抗議が多すぎて収拾しようがない様子が、激しく燃え盛るようなので、"炎上"と呼ぶようですね。
炎上には、幾つものパターンがあるようだということが、だんだんわかるようになりました。社会通念からかけ離れた言動をブログで自慢したりするとみるみる"炎上"するようですね。それから筆者の専門外の分野について、したり顔文章で述べたりする方のページも"炎上"していくケースが多いようです。また、政治的なもの、人種差別に抵触するもの、宗教的なものに関して発言されているページで"炎上"現象が起きやすいということもわかりました。そのような意見を書いておられた方に共通しているのは、「まさか、こんなに批判を受けてしまうとは」と、びっくりしておられる方が多いということです。ツイッターなどで「缶ビール飲んだけど、足がないから運転して帰ったヨ」などの呟きを見ると、誰かが書いていましたが「ツイッターは馬鹿発見器」というのは名言だな、と思います。しかも"炎上"の経過を眺めていると、"炎上"の当時者は、本名を暴き立てられ、退学、退職させられる経過が素早くて、愕然とします。これは、ネット社会ならではの現象なのでしょう。ネットがまだ普及していない時代であれば「大多数の批判意見の集中」は、まず活字で世の中に流れ、数ヶ月にわたって五月雨式にゆっくりと批判意見が返ってきたのではありますまいか。そして、拡散する前に次の話題へ移ってしまい消滅するケースも多かったかもしれません。今では"炎上"の話題はあっという間にネット上を駆け巡り、関係のない人々まで『どこかで"炎上"しているページがあるらしいぞ』と知り、その話題のページに訪れる。それからコメントに加わり、益々、火に油を注ぐ状況が作り出される。それまでのタイムラグはだいたい長くて数時間のようです。それから、そのページは書かれた方の謝罪か、あるいはブログやSNSからの撤退、閉鎖、放置という結果になって、やっと"鎮火"するということになるようです。
私の事で恐縮ですが、やはり無意識のうちに書いてしまった表現が、某地方紙に載って抗議のお手紙を頂いたことがあります。それは、ある映画評のコラムの中で、作品に登場する決断力のない男性のことを、「?の腐ったような奴」と書いてしまったのです。すると数通の抗議の手紙。くださったのは達筆の女性の方ばかりでした。私は女性を侮辱したつもりもなく書いてしまったので、傷つけてしまったら申し訳ないと謝罪の手紙を出したことを記憶しています。そして、表現には気をつけないといろんな受け取り方をする方がいるのだからと肝に銘じたものです。現代なら、"炎上"ものだったのでは、とよく連想するのです。
時は流れ、抗議のお手紙を頂いて十数年が経過して、目を疑う表現を目にしました。それは"腐女子"という人々の存在です。
まさか?いったいどんな人々?
婦女子ではなく、腐女子?
よく、わからない。ずぶずぶと融けていく発酵人間みたいな連想。こんな表現、OK?
しかし、いろいろ調べてみてわかりました。美少年同士が愛しあう世界をフィクションとして描いたもの。アニメやコミックやらも。それをBL(ボーイズラブ)というらしいんですが、そんな作品群を愛してやまない女性たちがいて、そんな女性たちは自分たちのことを自虐的に"腐女子"と呼んでいることを知りました。「こんな作品が好きな私たちって腐ってるかも」ということのようですね。
世の中はいろんな進歩を遂げているんですねぇ。だから、腐女子たちが、自分たちのことを腐女子としてブログやSNSで公言しても"炎上"することはなく.........。
ところが、驚いたのは、中国でBL小説を書いてネット発表をしていた若い女性が二十名も、最近逮捕されたというんですね。「耽美小説網」というページの関係者たちですが、「同性愛等の淫乱な内容を掲載した」という理由だそうです。写真で見る限り、どこにでもいそうな内気そうなお姉さんたちが逮捕されている。日本でBLを読む男って限られていると思うし、女性の妄想の世界が描かれている。だから風紀を乱すことには繋がらないと思うんですが。
中国はネット炎上より、当局による逮捕が先というのは怖いですねぇ。
腐女子逮捕に前後して、中国ではタイムトラベルのフィクッションも、「真面目な歴史を浅はかに扱う」という理由で禁止の流れがあるとのこと。
タイムトラベル話も禁止されるなんて、ネット炎上も怖いけれど、こちらも怖いなあ。