Column - 2015.11.02
第132回 台湾に行ってきました。
何を隠そう、私は自分でもかなりのいやしんぼだと思う。グルメといえば聞こえはいいけれど、とにかく珍しいもの、美味しいものに対して人一倍執着がある。
私の趣味の一つに山歩きがあるのだけれど、その動機として、山の頂上でグルメをする!というのがある。あるいは下りてきた登山口近くで、その土地の名物料理を探して食べるとか。久住山にコンロと鍋を持って行き、松阪牛とマツタケのすき焼きを作って食べたり、五家荘の山奥でキノコ鍋をこさえたり。山歩きの愛好者の方からは邪道だ!と罵倒されるだろうと案じつつも、美味しいものは食べたいよ。
だって、人間が一生に胃袋に入れる食べものの量が決まっているなら、可能な限り胃袋は美味しいものだけで満たしたいよね。しかも世の中が変化して、いつ美味しいものを食べることができなくなるかわからないから、食べられる間は食べておきたいな。
そんな考えでいる。
食べものに好き嫌いはない。で、最近、台湾の食は凄いよ、という話をよく耳にするようになった。中華系は特に好き。それで「エマノンの舞台を台湾にしようかな。ならば取材だな」その合間に美味しいものを食べ歩くというのはどうだろう。
そう理由づけて、二泊三日で台北に行ってきた。お昼には現地に着くから、七回は現地で食事ができるということで緻密な計画を立ててでかけた。
到着してすぐに飲茶へと走った。私は点心が入った台車をテーブルまで押してきて選ばせるのをイメージしていたが違っていた。今は写真付きのメニューで選ばせるようだ。豚の皮の照り焼き、ジューシーなチキンをパイ皮で包んであるもの、油條という油揚げパンみたいなものを薄い餅で巻いたもの。表面しっとり、中サクサクで美味しかったなあ。本来ならお茶を飲みながら楽しむのが飲茶だけれど、私の場合は台湾酒(ビール)。飲みやすい。料理に最適。そしてまたしてもミートパイ。八角風味が独特だった。皮蚕(ピータン)もよかったなあ。黄身が緑色でねっとりしている。白身がべっ甲色の半透明。マヨネーズがかかっていた。野菜は豆苗を炒めたもの。見かけは地味だがニンニクが効いていて抜群の美味しさだった。これだけで日本との食文化の違いを堪能できた。そしてお昼の〆はお店のメニューにお薦めとあった炒飯の海鮮五目かけ、かな。本当は違う料理名だけれど、こちらのほうがわかりやすい。
その夜は、もうあまり入らないな、と、夜市にでかけB級グルメを楽しんだ。地下鉄に乗って(乗りやすいし、わかりやすい。安い!日本の地下鉄のノウハウがかなり入ってるな)士林夜市に行ってみる。でも、お昼食べ過ぎてもうあまり入らない。牡蠣のオムレツとビールが精一杯かな。
翌日は、朝から裏通りを歩き、人がたくさん入っているお店に飛び込んでみた。メニュー表にある日本語を頼りに書き込み手渡す。とにかく地元の人が入れ代わり立ち代わり。人気店なんだろうなあ。蛋餅というタマゴ餅を注文。外カリカリ、中ふんわか。初めての味だったなあ。それから豆漿といってホット豆乳ドリンク。隣のテーブルで辛い薬味を入れていたから真似してみたら、結構ピリ辛で好みの味になる。さらに大根餅も。朝からよく食べたなあ。
それから、またしても移動。龍山寺というお寺に行ったけれど、特筆すべきは、そのお寺の近くの横丁で食べた「胡椒餅」なるもの。お寺の近くは人通りが凄いのに、その横丁にはほとんどだれもいない。だが一か所だけ人がたむろしている場所が。それが元祖「胡椒餅」のお店。真っ赤に焼けたでかい壺からお万十を焼いたものが次々に取り出される。それを皆、十個単位で大量に買っていく。もちろん私が買ったのは一個だけ。中にはゴロゴロと豚肉が詰まっていた。豚万十とも違う独特の食感。これは美味かった。「胡椒餅」はどこでも売っているらしいけれど、うまい店とまずい店があって、ここは美味さで評判の店だったとのこと。よかった。
さて、その夜は九に取材にでかけてホテルに帰り着いたのが夜の九時過ぎ。
ホテルの近くで食べるかと飛び込んだお店で、とんでもないものを食べてしまった。旅行中のベストの一品。潮式粥のお店。ええ、粥なんだけれど、見かけも普通で地味なんだけれど。とんでもなく美味しい。肉厚の特殊な種類の椎茸と鶏で作った粥。
ふーん。粥?
そう思って口に入れたら、舌から脳にかけてショックが走り中華匙を持つ手が止まった程の旨味全開。
粥に対する考え方がコペルニクス的転回を遂げたなあ。まさにこの体験は未知との遭遇。
この粥を食べるためだけに台湾に行ってもいいよ!
最終日は台湾料理。イカ団子や蟹のおこわやら切り干し大根のオムレツなどを食べて、いづれも美味しかったなあ。こんな満腹グルメ旅行は久々だった。中華系は贅沢料理もジャンクフードも何でもおいでみたいな気になるよ。
台湾に何か食べに行こうと誘われたら、ホイホイ乗っちゃうかも。
それからもう一つ。台湾を発つ日のこと。小銭が残ったのでホテル近くのコンビニへ行った。そこで、何やら正体不明の瓶詰めのご飯の友みたいなのを、何も期待せずに買ってみた。それを帰宅後に食べたら......なんという旨さ。食べるラー油というのが一時期流行したけれど、もっと辛いし、もっと旨味がある。小エビやら小魚の姿もわかる。ウマーい。知っていたら買いだめたのに。「五星上醤」とあったから、これから台湾に行く方はぜひメモを。ま、こんなとこかな。
観光は?どんな取材したのって?
それは作品の中でゆっくり丁寧に語るつもりなので、その時にということで。