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Column - 2015.07.01

第128回 電子書籍なるもの

もの書きの仕事をやっていて、尋ねられることに時代の変化を感じることがよくあります。
「筆圧が強いので、手が痛くなって辛いです」と紹介文に書くことがあるのですが、それを読まれて、びっくりされる方が増えました。
「えっ?ひょっとして原稿は手書きなのですか?パソコンじゃないのですか?」
 私パソコンを持ちません。一時期、持っていたこともあるのですが、家族に奪われてしまいました。だから知り合いと連絡をとりあうときのEメールは携帯電話を使うことにしております。それもスマホじゃありません。ガラパゴス携帯、いわゆるガラ携であります。中には、大容量のデータを添付して来られる方もありますが、開けません。そんなときは「すんません。プリントしたものをファックスしていただけませんか?」と、恥ずかしながらお願いすることにしています。
 根っからのアナログ人間なのでしょうか。
 いや、実はパソコンで小説やらエッセイやら書いたことがないわけではありません。確かに最初は慣れないキーボードで執筆速度が遅かったことは認めます。ただ、一定期間を経過すると、キーボードタッチは結構なスピードに上達しました。それでエッセイを書いてみたら...。
 あれれのれ。
 なんと、思考速度よりも指先の動きのほうが速くなってしまったのです。
 いわば指先の暴走状態とでもいいますか。頭の中にこれから書こうという文章が浮かんでいるにもかかわらず、書こうとした文章に関連した文が勝手に指先から打ち出されて増幅する、という怪奇な現象が発生。
 どうも上手くまとまらない。
 それで、キーボードをやめて、再び手書き原稿用紙に戻ってみました。すると、文字を書く速度と思考速度がぴったり!で、今に至る、というわけです。
 私が手書きを続けてることを知り驚かれる方は、続けてこうお聞きになりたいのでしょうね。
「ところでカジオさんは、どんなものを書いておられるんでしたっけ?SFとかが多いんですよねぇ。SFって未来の技術とかを書いたりするんですよねぇ。そのカジオさんが手書きですか?」と想像します。私も「紺屋の白袴ってやつですよ」と心の中で想像の質問に答えているわけですが。
 もう一つ、時代の変化だなぁと思うのは、「電子書籍をどう思います?」という質問が増えたことです。私のまわりでも「読書は最近はKindleです。字が大きくできていいですよ」と言ってる人々が増えてきました。
 ちなみに、私は書物は紙だけ一本槍です。何となく......じゃなく本は自分の手でぺらぺらページをめくらなくては。あと、どのくらい読めるか、自分の目で本の残りの厚みを確認したい。
 だから、全く電子書籍タブレット端末は持っていません。
 東京から来られた編集者の方がKindleを持っておられたので尋ねてみました。
「やはり、Kindleが使いやすいですか?読みやすいですか?」
 すると、編集さんは仰言いました。
「使い分けているんですよ。やはり小説とかの文字情報は紙の本がいいんですよ。ただコミックは本で買うと量がねぇ。やたら溜まるんですよ。だから、コミックはこちらにしてます」
 はあ、なるほどね。
 それから私も、書籍タブレット端末のことをいろいろ検討しているのです。そして、先日、銀行に口座の振込のつけこみに行ったら驚く数字が入金されていました。電子書籍の印税でした。それだけ書籍タブレットで読む人が増えているんだなあと実感した次第。
 電子書籍はいかがですか?という質問には、こう答えることが多いです。
「大好きな人がデータ化されて、専門の装置を使えばいつでも会えるなら、あなたは本人じゃなくデータで満足しますか?」と。そして、「"人"を"本"と置き換えるとわかりやすいかと思います」と付け加えます。
 私は手触りや匂いなど、本のすべてが好きだから、電子書籍はちょっと無理かも。でも、大好きな人をデータ化したら老化しないよなあ。大好きな本もそのままだと酸化したり日焼けぼろぼろになったりするなぁ。
 ちょっと待て。
 しばらくしたら、どちらがいいか違った結論にたどり着いているかも。

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