Column - 2006.05.25
第1回「白髪岳にキノコとり」
さて、このホームページをスタートするとき、高橋酒造へ挨拶のため訪問してわかったこと。焼酎白岳の白岳とは、白髪岳から由来して名付けられたということである。
昔々、山歩きが好きな私は白髪岳に登ったことがある。標高一四一七メートル。ブナの原生林が見事だったという記憶がある。
その頃は、まだキノコ採りに目覚めていなかったのだが、植生からしてこの山はキノコの宝庫という予感を持っていた。
「そうですか、白岳は白髪岳ですか。皆でキノコ狩りに行ったら楽しいだろうなぁ」と思わずもらしてしまった。
「その企画いいですね。やりましょう」
とんとん拍子に話は進み、白髪岳でキノコ狩り探検隊である。
頃はといえば十月下旬。九州では、これからキノコの発生時期という微妙な頃。
麓のビハ公園キャンプ場に集合していざ登山口へ!心ははやる。ブナの樹に群れるムキタケや、ブナシメジ、ナメコなどのイメージが頭の中で私に流し目をくれるのだ。待ってろよ。もうすぐ、篭の中に入れてあげるかんねー。
登山口から歩きはじめる。登山道の脇の倒木に目を走らせ、あっちうろうろ、こっちうろうろ。藪をかきわけ、倒木をのぞく。サルノコシカケやカワラタケは目につくのだが、おいしい食菌は見あたらない。
「あっ」と声をあげかける。倒木にキノコのシルエット。あわてて駆けよる。びっしりとついていたのは、おいしそうなツキヨダケ。でも、これ猛毒なんだよなぁ。シイタケそっくりだから、九州では、このキノコにアタる人が一番多い。・・・・ということは、食菌の時期には、ちと早すぎたということか・・・・。少し悲しい気分になる。
その後、すぐにナラタケを発見!探検隊の皆を呼び集める。ナラタケは、やはり初秋からのキノコだから、二週間ほどシーズンには早かったということかなぁ。でも、歯ごたえのいいキノコだから良しとするか!それからホコリタケの幼菌をいくつか。これも、マシュマロみたいな感じなのだよね。口に入れたとき。良しとしよう。
カメラ担当のO氏が、「これ何でしょう」見るとクリタケの幼菌たちであった。「食べましょう」と採る。
高橋酒造の高橋専務が、藪の中に消え、しばらくして、「こんなものありました」とキノコを採ってきた。見るとスギタケだ。これちょっと若いかなぁ。
私のキノコの考え方は「おいしいキノコ」
「それ以外のキノコ」という二極分化した大雑把なとらえかたでしかない。
はや、頂上近くだが、後が駄目だ。地面が乾ききって、キノコの気配も見えなくなった。
もう一つ見えなくなったのはキノコ好きというM氏である。藪の中に入って以来、姿が見えない。心配していると、突如、現われる。ちゃんと獲物を手にしている。アカモミタケだ。これは私も、まだ、食べたことがない。それから黄色いキノコを二本。「笑顔のないかたに、おすすめしようかと思って」オオワライタケである。マンガによく登場するキノコである。
以降、目ぼしい収穫はない。どん欲な探検隊としては、少々、物足りない。「焼酎しろ」のビンを半ば土に埋めておいて、「あ、こんなところに名菌ハクタケが生えている」というのはどうだろうなどと、ふと思いつくが、馬鹿にされそうなので黙っておく。
とれたキノコは、ビハ公園で皆ですき焼きに入れて食べる。ううむ。デリシャスである。今一つ、満足いく収穫にはならなかったが、白髪岳!今日はこのくらいで許してやる、とつぶやく。でもスキヤキうまかったな。朴葉味噌にナラタケとアカモミタケ入れたのも絶品だったぞ。
焼酎くいと飲んだとき、声が!
「キノコ、キノコ」
声の方角へ、皆が駆け寄る。なんと公園キャンプ場の草の中にヌメリイグチの群生が
「登らなくても、ここでとりましたねぇ」
そこで、皆、苦笑いでキノコ探検隊は幕を閉じた。