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News - 2021.07.01

第200回 人生でたいせつなこと

 本日、皆さまにお話することになりました、エヘン、ゲボゲボ。機敷埜風天と申します。ええ、…何だっけ、ええっ。あああ。ああ。よく聞こえない。…ああ、そう。
「人生でたいせつなこと」について、であります。人生といえばたくさんの方が、それぞれの人生を歩んでこられてきておられるわけで、ございます。あ、暑うございます。遠慮されんと上着とられてけっこうでございますよ。あ、人生ですね。私の叔母もですね「人生いろいろ」という唄が好きでしてね。人生にはいろいろあるんだ、ということを島倉千代子という歌手が唄っておられました。私もですねぇ、島倉千代子が好きでしてねぇ、カラオケに行ってどなたかが島倉千代子を唄われると、とてもよい気分になりますな。私は唄いません。なにせ音痴でしてな。何を唄っても同じ曲にしか聞こえんらしい。私が幼い頃から異様に耳が良すぎたところに音痴の原因はあるのですよ。というのが、私の婆やが赤子の私を背負うてあやしながら子守唄を唄ってくれたのですが、この婆やは評判の音痴だった。しかし耳の良い幼子の私は、それを正確に記憶してしまったらしい。私はそれ以来、すごい音痴になってしまったというわけ。耳が悪ければ音痴になることもなかったはず…。大学は、南方にあるマイマイ島のハレホレ大学無理学部に在籍しておりましてな。若かりし日の私は日々勉学にいそしんでおりました。すると、学級の徒であった私に大変なことが起こりました。公園のベンチで教科書と参考書に目を走らせておったときですよ。目の前をこれまでの生涯で見たこともない美女が歩いておったのです。自分の目が信じられなくなるほどの美女です。私は参考書をそこに置き去りにしてふらふらと彼女に尾いていった。するとほどなく彼女の家の前に着いたが、人がならんでいる。聞くと、みな彼女のフアンということで彼女とつきあいたいが、彼女は大の唄好き。彼女の前で唄を唄って気に入られないと、ダメということらしいのです。で、みな彼女の前で唄い、私の番がまわってきたました。もちろんダメ。気に入られなかっただけではなく、そのとき自分が音痴だということを思い知ったわけです。
 人は思い知ることが大事ですな。そうそう、思い知らされたといえば私はトイレが近いこと。今思い出したが30分毎に尿意に襲われる。そうなると思考が途切れて何も集中できんようになる。えーっと、何の話をしておったかな。今も、少ぅし、尿意が近づいているのがわかるので不安になってきております。ところで、いかにして私が尿意を抑えられているかというと、若い頃、頼まれて龍退治をしたことがありまして。龍の巣に行き18人がかりで龍を追いつめてやっと仕留めた。村人たちは喜んで龍の肉を分け合って持ち帰っていたなあ。これで私を招いた村は龍に毎年襲われることはなくなったというわけですが、そのとき、帰りかけた私に長老が、お待ちなさい!と龍の膀胱を差し出した。これを煎じて必要なとき飲めば尿意をもよおしても3時間はこらえることができるようになると。若い頃は、そんなものは必要なかったのですが、最近は使いたくなってきた。確か箪笥の奥にしまっておいたはずが、見つからず不思議でならないのです。目の前を通りがかった昔なじみの爺さんに尋ねてみましたよ。龍の膀胱は知らんかね、と。いや、龍の膀胱なんて見たことも聞いたこともない。密室殺人をあんたが解決したときに手に入れた河童の手なら見せてもらったことがある、と。
 あ、そういえば密室殺人の解決を頼まれたことがあったなぁ。警察も名探偵もその謎がわからなかった。蔵の内部から鍵がかけられて、中で主人が背に短刀を刺され殺されていた。蔵を見回して言った。お前が、犯人だ!と。犯人は河童だったんですよ。人間の手なら蔵の中の鍵に手が届かない。でも、河童の右腕と左腕は繋がっているのです。だから人の手では内部の鍵に届かなくても河童なら手を伸ばして複雑な解錠操作ができる。だから、犯人は河童だぁ!と。喝破された河童は驚き、思わず右手を落として逃げていったのですね。それで、仕方ないと河童の手をうちに引き取ったのかな。
 あー、しかし、河童の手ではトイレを我慢できるわけもありません。とにかく、尿意を催したら、自分の気を散らすしかないわけです、そういうとき、母親がトイレには幽霊がいるんだからね、と言っていたことを思い出します。みなさんもそんな記憶がありませんか。夜中のトイレにひとりで行くと、中で幽霊が待っている、と思ったこと。あるいは妖怪が出てくるぞ、と感じたこと。実は、トイレには幽霊も妖怪もおるんですよ。無理学部にいた頃はそんな研究ばかりしておりましてな。幽霊も妖怪もいないと思えばいない。いると思えばいる。無理学が通れば道理学が引っ込むのです。そのときのゼミのクラスメイトが変な奴ばかりで。一番変わっていた奴が、時間軸圧縮理論とか考えている奴でしてね。今はどうしているかなぁ。そいつは時を超える装置を作れるとか言っておりました。そいつがある日トイレから出れなくなりまして、内側から叩いたり叫んだり大変な騒ぎ。時を超える装置を作ろうという奴がトイレから出れんなんてね。え、何ですか。は、もう時間ですか。よかった。トイレが。は、まとめろ。題は…。え、なんですか?は、ありがとうございます。そうですね、もうやめろ、ということです。人生でたいせつなことは、ありがとうの気持ちを忘れないということですね。今、ありがとうを申し上げて思い出しました。大事です。
 では皆さん、さようなら。ほんとうに、ありがとうございます。

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