米と水にこだわる
「究極の米焼酎づくり」にあたり、杜氏はシンプルに原料となる米と水にこだわりました。選んだ米は、熊本が誇る米、熊本らしい米。かねてから焼酎造りに試してみたいと考えていた熊本県産米「森のくまさん」です。この米だけを100%使うことにしました。水は球磨焼酎の原点、熊本が誇る清流で日本三大急流の「球磨川」の伏流水です。
還暦を迎えた杜氏が小山薫堂さんに背中を押され、杜氏としての最後の仕事、集大成として取り組んだこの「究極の米焼酎」プロジェクト。酒づくりを始めた当初は目指す酒質の方向性へなかなか近づけず、「森のくまさん」が持つ良さを引き出せないなど、試行錯誤を繰り返しました。「自分自身が最も旨いと思う酒質」「孫に残したい究極の酒」という目標。自らが造り続けてきた代表ブランド「白岳」や「しろ」との戦いでもありました。麹、酵母、仕込み方法のすべてを洗い直し、自らが育てた蔵人とともに試作を重ねましたが、なかなかうまくいきません。挫折しそうな中、杜氏や技術者を支えたのは百年蔵であることの誇りと、造り続けてきた「旨い米焼酎づくり」への情熱、そして蔵や仲間への感謝でした。
そして最後にたどり着いたのが、麹のみで仕込む全麹方式と3種の吟醸酵母を用いた吟醸仕込みを組み合わせた独自の「全麹吟醸仕込み」。「これでいける」。熟練の杜氏や技術者たちが目指す「究極の米焼酎」への道筋が見えた瞬間でした。